呼吸器内科|多摩市永山で呼吸器のことなら
-永山諏訪内科呼吸器内科

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呼吸器内科

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気管支喘息

概念・疫学

気管支喘息(以下喘息)は、「気道の慢性炎症を本態とし、臨床症状として変動性をもった気道狭窄(喘鳴、呼吸困難)や咳で特徴付けられる疾患」と定義されています。喘息の人の気道は、炎症細胞(好中球、好酸球、リンパ球など)、気道構成細胞(気道上皮細胞、繊維芽細胞、気道平滑筋細胞など)、および種々の液性因子により、症状がないときでも常に炎症(慢性炎症)を起こしています。その結果、健康な人に比べて気道が狭くなり(気道狭窄)、気道はとても敏感(気道過敏性亢進)になっています。そのため、炎症がおこっている気道は、ホコリ、タバコ、気圧の変化、ストレスなどのわずかな刺激でも敏感に反応し気道が狭くなり、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)、息苦しさ、咳などの症状を認めます。喘息の治療は、発作をおこさないために気道炎症をコントロールする治療が中心となります。日本では子供の8~14%(赤澤 晃ガイドラインの普及効果QOLに関する全年齢全国調査に関する研究報告書 2008年)、大人では9~10%(Fukutomi Y. Int Arch. Allergy Immunol 2010)が喘息と報告されています。成人、高齢になってから発症する方もいます。

症状

発作的に咳や痰が出て、ゼーゼー、ヒューヒューという音を伴って息苦しくなります。夜間や早朝に症状が出やすいのが特徴です。喘鳴や息苦しさを伴わない、咳だけが症状の咳喘息(喘息の亜型)もあります。治療せずに放置すると、気道の炎症が悪化して、発作の頻度が多くなったり、症状が重くなったりします。

診断

上記のような症状を繰り返していれば、喘息の可能性があります。呼吸機能検査(スパイロメーター)で気道の空気の流れが悪くなっていないかどうかを調べます。気管支拡張薬を吸ったあとにその流れが改善(気道可逆性)すれば喘息の可能性が高まります。また、痰の検査(好酸球)や吐いた息の中の一酸化窒素(NO)濃度などを測定して気道の炎症を調べます。血液検査でアレルギー体質かどうかや、アレルギーの原因(アレルゲン)も検査します。以下、喘息診断の目安です。

表 喘息診断の目安

発作性の呼吸困難、喘息、胸苦しさ、咳(夜間、早朝に出現しやすい)の反復
可逆性の気流制限
気道過敏性の亢進
アトピー素因の存在
気道炎症の存在
他疾患の除外

※アトピー素因(①または②)

  1. 家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー 性皮膚炎のうちのいずれか、あるいは複数の疾患)
  2. IgE抗体を産生しやすい素因

治療

症状がないときも、気道の炎症は続いています。炎症が続けば発作が起こりやすくなり、学校や会社を休み、日常・社会生活に影響が出ます。そして炎症が続くと気道が固く狭くなり元に戻らなくなる(リモデリング)ので、継続した治療によって慢性的な気道の炎症をコントロールすることが重要になります。薬物療法の中心は吸入ステロイド薬です。適切に使用すれば副作用は少なく安全に使用できます。喘息の重症度に応じて吸入ステロイドの量を調整し、他の薬を追加します。また、アレルギーの原因が分かっている場合はそれらを避け、喫煙していれば禁煙しましょう。喫煙は喘息症状を悪化させる原因になり、吸入ステロイドの効果を減弱するので、喘息治療に禁煙は必須です。もし発作が起こったら、即効性のある気管支拡張薬を吸入します。気管支拡張薬を使用して改善しないときや息切れが強いときは、速やかに病院を受診してください。また高容量の吸入ステロイド薬及び複数の喘息治療薬を用いても症状が安定しない難治性喘息では、生物学的製剤が考慮されます。

COPD:慢性閉塞性肺疾患

概要・疫学

慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)は、以前慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じた肺の炎症性疾患であり、喫煙習慣を背景に中高年に発症する生活習慣病といえます。タバコ煙を吸入することで気管支に炎症がおき、せきや痰などの症状が出現し、肺胞(はいほう)が破壊されて、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能が低下します。これらの変化は、治療により元通りになることはありません。我が国の疫学調査(NICE study 2001年)の結果では、40歳以上の人口の8.6%、約530万人の患者が存在すると推定されています。しかし、大多数が未診断、未治療の状態と考えられています。我が国の2010年度の死亡原因の9位、男性では7位であり、2004年の世界保健機関(WHO)の調査では、COPDは死因の第4位になっています。

症状

歩行時や身体を動かした時に息切れを感じる労作時呼吸困難や慢性のせきやたんが特徴的な症状です。一部の患者では、喘鳴や発作性呼吸困難などぜんそくの様な症状を合併する場合もあります。COPDは、肺だけに止まらず、全身性の炎症を生じます。具体的には、骨格筋の機能障害、栄養障害、骨粗鬆症、代謝性疾患(糖尿病、メタボリックシンドロームなど)などにも関連しています。

診断

長期の喫煙歴があり、慢性的ににせき、たん、動いた時の呼吸困難感があればCOPDが疑われます。確定診断にはスパイロメトリーといわれる呼吸機能検査が必要です。最大努力で呼出した時にはける全体量(努力性肺活量)とその時に最初の1秒間ではける量(1秒量)を測定し、その比率である1秒率(1秒量÷努力性肺活量)が気道の狭くなっている状態(閉塞性障害)の目安になります。気管支拡張薬を吸入したあとも1秒率が70%未満であり、閉塞性障害をきたすその他の疾患(喘息など)を除外できればCOPDと診断されます。当院で呼吸機能検査を行っています。

治療

禁煙が治療の基本となります。気流閉塞(呼吸機能)の重症度だけでなく、症状の程度や増悪※の頻度を考慮し、治療法を徐々に増やしていきます。薬物の中心は、効果や副作用の面から吸入薬が推奨されており、主として長時間気管支を拡張する吸入抗コリン薬や吸入β2刺激薬を使用します。呼吸機能の低下が著しく、増悪を繰り返す場合は、吸入ステロイド薬を使用します。非薬物療法では、呼吸リハビリテーション(口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの呼吸訓練・運動療法・栄養療法など)が中心となります。低酸素血症が進行してしまった場合には在宅酸素療法が導入されます。さらに呼吸不全が進行した場合は、小型の人工呼吸器とマスクを用いて呼吸を助ける換気補助療法が行われることもあります。インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種も勧められます。

※増悪:COPDの増悪とは、息切れの増加、咳や喀痰の増加などを認め、安定期の治療の変更あるいは追加が必要となる状態。増悪は、患者のQOLや呼吸機能を低下させ、生命予後を悪化させる。

LAMA:長時間作用性抗コリン薬、LABA:長時間作用性β2刺激薬
+:加えて行う治療

急性気管支炎

概念・原因

急性気管支炎は気管支粘膜における急性炎症であり、多くは、かぜ症候群での上気道の炎症が連続する気管・気管支へ波及することで発症します。原因微生物としては、かぜ症候群と同様にウイルスによるものが多いといわれています。ライノウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルス、ヒトメタモニューモウイルスなどです。また、百日咳、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジアなどが原因になる場合もあります。基礎に慢性呼吸器疾患がある場合や、全身的に免疫的抵抗力の低下がある方などは、ウイルス感染に引き続いて、二次性の細菌感染が起こる場合もあります。

症状

主な症状としてはせき、たん(膿性のこともあり)があげられます。発熱、食欲不振、全身倦怠感といった全身症状を伴うことや前胸部不快感を伴うこともあります。マイコプラズマや百日咳が原因の時は、強い咳が数週間以上持続することがあります。

診断

主にせき、たんといった臨床症状から診断します。体温38℃以上、脈拍100 回/分以上、呼吸数24 回/分以上及び胸部聴診所見の異常をみとめるときなどは、肺炎の合併を鑑別する必要があるため、胸部レントゲンもしくは胸部CTを施行する必要性があります。また2-3週間以上咳が長引くときは、結核を除外する必要性があるので胸部レントゲンは必要と考えます。長引く咳の原因として百日咳があります。百日咳は、特異的な臨床症状はないことから、臨床症状のみで診断することは困難とされますが、咳の後の嘔吐や吸気時の笛声(inspiratory whoop)があれば百日咳の可能性が若干高くなるといわれています。

治療

ウイルス感染が主な原因であり、咳を主体とした症状は通常は自然に改善します。そのため、基礎疾患や合併症がない急性気管支炎に対しては通常は抗菌薬の投与は不要であり、安静、水分栄養補給などの対症療法が中心になります。咳が強いときは、鎮咳剤、痰が多いときは去痰剤などを使用します。細菌感染が疑われた場合は適宜、抗菌薬を使用します。

肺炎

概要・疫学

肺炎は、細菌やウイルスなどの微生物が肺に感染し炎症を起こす病気です。2016年の国内の肺炎による死亡者数は119,300人です。悪性新生物(372,986人),心疾患(198,006人)に次いで死亡原因の第3位になっています。肺炎の死亡者の95%以上が65歳以上の高齢者です。市中肺炎は、一般の社会生活を送っている人、すなわち健康な人あるいは軽度の病気を持っている人に起きる肺炎を指します。

原因

原因となる微生物は、肺炎球菌が最も多く、次にインフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミドフィラとなっています。

症状

せき、たん、息切れ、発熱、呼吸数の増加などの症状がみられます。ただ、高齢者では肺炎を起しても、はっきりとした症状を示さないことがあり、食欲低下、なんとなく元気がない、会話が少ないなども肺炎を疑うきっかけになることがあります。

診断

聴診、胸部エックス線検査、血液検査などで診断します。肺炎と診断した場合は、原則として可能な限り、肺炎の原因微生物を調べる検査を追加します。痰の培養や尿や鼻の奥をこすって採取した検体を使用し、原因微生物を調べます。

治療

初期治療は推定される病原微生物に効果があると考えられる抗菌薬で治療します。軽症であれば、抗菌薬を飲みながら外来通院で治療します。高齢者、全身状態が不安定な方、基礎疾患がある方などは入院し、抗菌薬を注射します。肺炎の予防には、バランスの良い食事、適度な運動、禁煙、手洗い、口の中を清潔にするなどが重要です。またインフルエンザワクチン肺炎球菌ワクチンなどを接種しておくことで、肺炎予防につながります。

肺がん

肺がんとは、気管、気管支、肺胞の一部の細胞が何らかの原因でがん化したものです。肺がんは進行するにつれて周りの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れに乗って広がっていきます。発生する悪性腫瘍で肺そのものから発生したものを原発性肺がんといい、通常肺がんといえば原発性肺がんを指します。原発性肺がんは、非小細胞肺がんと小細胞肺がんに分類されます。一方、他の臓器から発生し、肺に転移したものを転移性肺がんと呼びます。基本的にがんの性質は、発生した臓器で決まります。

表:肺がんの分類

疫学

肺がんは、日本全国で1年間に10万人以上が診断されます。男性に多い傾向があり、60歳ごろから急激に増加しはじめ、高齢になるほど多くなります。

原因

肺がんの最大の原因はタバコですが、その他に食生活、放射線、薬品なども挙げられます。タバコには約70種類の発がん物質が含まれており、肺や気管支が繰り返し発がん物質にさらされることにより細胞に遺伝子変異が起こり、この遺伝子変異が積み重なるとがんになります。

症状

肺がんの一般的な症状としては、咳(せき)、血痰(けったん)、胸痛、息切れ、声のかれ(嗄声:させい)などがありますが、必ずしも肺がんに特有のものではありません。肺がんは進行の程度にかかわらずこうした症状がない場合も多く、検診などの胸部X線検査やCT検査によって偶然発見されることもあります。

検査

肺癌の検査には、(1)肺がんがあることを調べる検査と(2)肺癌の進行度(がんの広がり)を調べる検査があります(1)の検査として胸部レントゲン、胸部CT、喀痰(かくたん)や気管支内視鏡を用いた病理学的検査があります。胸水(胸腔内にたまった水)がある場合は、針を刺して胸水を採取しがん細胞の有無を調べます。(2)の検査としては、全身CTPET検査、脳MRI、骨シンチ、超音波検査などが用いられます。以上の検査で、肺がんの種類と広がり(進行度)を評価します。進行度は、転移がなく局所にとどまるものから転移を認める進行がんまで4段階に分けI期、II期、III期、IV期に分類します。

治療

非小細胞肺がんは、早期であれば手術が最も治癒の期待できる治療法ですが、発見された時には進行している場合が多く、放射線治療や抗がん剤治療、さらにこれらを組み合わせた治療が選択されます。抗がん剤治療では、細胞傷害性薬剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを用います。小細胞肺癌は、病期に応じて抗がん剤治療に放射線治療を組み合わせます。

検診

肺がんの予防には禁煙が最も重要ですが、定期的に検診を受けて早期発見を心がけることも大切です。肺がんの検診方法として“効果がある”とされているのは「胸部X線検査」です。さらに喫煙者の場合には「胸部X線検査」と「喀痰細胞診(かくたんさいぼうしん)」を組み合わせて検査します。検査対象となる喫煙者とは、喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が 400以上あるいは600以上の方です。

間質性肺炎

間質性肺炎とは、肺を支える間質に炎症や線維化が起こる病気です。肺は肺胞というブドウの房状の小さな袋がたくさん集まってできています。ブドウの房(肺胞)同士の間を「間質(かんしつ)」といいます。間質から始まった炎症は、肺胞の壁などにも広がり、壁が厚く硬くなり、酸素を取り込みにくくなります。

図:間質性肺炎の分類

原因

間質性肺炎の原因は様々です。原因が特定できないものも多く存在し、それらを特発性(とくはつせい)間質性肺炎と言います。

症状

初期には無症状のことが多く、病状がある程度進行してくると動いた時の息切れやせきなどを自覚します。進行は緩やかなものもありますが、急速に進行するものもあります。

診断

問診、身体診察に加えて、胸部エックス線や胸部CT、呼吸機能検査、血液検査、動脈血ガス分析などを行います。胸部CT画像により画像のパターンを分類します。気管支鏡検査により肺胞の洗浄検査等を行うことや、胸腔鏡下に1cm程度の病変部を外科的に切除・採取し、検査することもあります。

治療

原因が明らかであれば、まずは原因を取り除き、原因に曝露しないようにします。原因を除去できないときや病状が進行してしまうときは、ステロイドや免疫抑制剤や抗線維化薬などを使用することもあります。病状が進行すると呼吸不全となり酸素吸入が必要になることもあります。特発性間質性肺炎は国の難病(特定疾患)に指定されています。

生活上の注意

風邪などをきっかけに急激に病状が悪化することがあります。このようなことを防ぐために、日常の手洗いなど徹底するとともに、肺炎球菌、インフルエンザ、コロナ等のワクチンを受けておくことが推奨されます。喫煙は肺がんなど重篤な合併症のリスクも高めますし、間質性肺炎の悪化予防のためにも禁煙が必要です。

肺結核

概要

結核菌による感染症です。肺に感染を起こすことが最も多いですが(肺結核)、リンパ節、腸、骨などにも感染します(肺外結核)。

疫学

患者数は減少していますが、日本は先進国の中では多く、2016年には17625人が発病しています。

感染の経路と発病

患者さんがせきをしたときにでる細かいしぶきに含まれる結核菌が乾燥して空中を漂い、他の人が呼吸をして肺の中に吸い込まれることで感染します。感染後に発病する人は10%程度です。多くの人は、免疫で結核を封じ込めますが、その後加齢や病気などにより免疫力が落ちたときに発症することがあります。

症状

咳、痰(時に血痰)、倦怠感、発熱、寝汗などが出ることもあります。せきなどの呼吸器症状があると周囲の人にうつる可能性が高くなります。感染しやすい人は免疫のない若者、糖尿病、がん、透析患者、慢性関節リウマチで治療中の人、エイズなどです。せきが二週間以上続く時には、結核の可能性を考慮する必要があるので、胸部エックス線検査を受ける必要があります。

検査

たんなどの培養で結核菌が検出されると発病していると考えられます。結核菌は発育が遅いので、最終結果が出るまでに長い場合 8週間近くかかります。その他の検査としては、胸部エックス線検査、胸部CT検査などの検査が行われます。

治療

結核菌が大量にたんから検出される場合(排菌している場合)は、感染性があるため結核専門に入院して治療が必要です。治療は抗結核薬の内服になります。最短でも6ヶ月間飲みます(最初の2ヶ月は4種類、その後の4ヶ月は2種類)。飲み忘れると薬の効かない耐性結核となってしまう可能性があるので、継続した内服が重要です。

非結核性抗酸菌症

非結核性肺抗酸菌症とは結核菌とらい菌以外の抗酸菌による感染症です。現在100菌種以上発見されており、国内では20種類を超える菌種が報告されています。日本の非結核性抗酸菌症の8割以上がマック菌(MAC:Mycobacterium-avium complex)、1割がカンザシ菌という菌であり、残りがその他の菌で占められています。非結核性抗酸菌は土や水などの環境中に存在する菌で、結核菌とは異なり人から人には感染しません。中高年の女性に多い傾向があります。数年から10年以上かけて、ゆっくりと進行することが多く、普通の免疫状態であれば、結核のように急速に進行することは少ないです。

症状

初期は無症状のことが多く、進行するとせき、たん、血たん、息切れ、発熱、体重減少などが出現してきます。

診断

胸部レントゲンや胸部CTで肺に異常がないかを調べます。また、たんの中に菌が含まれていないか、遺伝子検査(PCR)、菌の培養などを行い調べます。培養は、結果が出るまでに1か月以上かかることもあります。この菌は環境中に存在するので、たんで2回以上、気管支内視鏡検査で1回以上菌を確認する必要があります。

治療

非結核性肺抗酸菌症のうちマック菌が原因と診断されて、症状や肺の所見が悪化してくる場合には、年齢、体力、副作用などを考慮し、治療を検討します。薬は抗結核薬を含めた3-4種類の薬を用います。治療期間は長く、薬の効きにくい方もいます。このため高齢者などでは、対症療法のみを行う場合もあります。抗結核薬による治療を行っても、菌が完全に消えないことが多くあります。治療終了後も再発しないか定期的に画像検査を行う必要があります。再発したときは、治療を再開します。一方、カンザシ菌と診断されたら場合は肺結核と同様の治療を行い、効果が期待できます。

誤嚥性肺炎

誤嚥

食べ物や飲みものを飲み込む動作を「嚥下(えんげ)」、この動作が正しく働かないことを「嚥下障害」といいます。食べ物や飲み物、胃液などが誤って気管や気管支内にはいることを「誤嚥」といいます。

誤嚥性肺炎とは

誤嚥性肺炎は、細菌が唾液や胃液と共に肺に流れ込んで生じる肺炎です。高齢者の肺炎の70%以上が誤嚥に関係していると言われています。再発を繰り返す特徴があり、それにより耐性菌が発生し、抗菌薬治療に抵抗性をもつことがあります。そのため優れた抗菌薬治療が開発されている現在でも治療困難なことが多く、高齢者の死亡原因となっています。

誤嚥性肺炎のおこる理由

(1)口腔や咽頭内容物による誤嚥、(2)胃逆流物による誤嚥があげられます。
老化に伴って起きる生理的な変化や脳血管障害や神経系疾患では神経伝達物質(サブスタンスP)の減少で咳反射や嚥下反射の機能低下によりおこります。嚥下反射の低下により知らない間に細菌が唾液と共に肺に流れ込み(不顕性誤嚥)、肺の中で細菌が増殖して肺炎を引き起こします。嘔吐などによる胃液が食べ物と共に食道を逆流しておこることもあります。

症状

発熱、せき、喀痰など通常の症状を訴えないことも多く、なんとなく元気がない、倦怠感を訴えることもあります。食事中のむせこみ、常に喉がゴロゴロ鳴っている、唾液が飲み込めない、食事に時間がかかる、たんが汚いなども疑わしい症状です。また、酸素低下をきたし、重症の呼吸不全になることもあります。

治療

誤嚥性肺炎を起こす細菌の多くは嫌気性菌(酸素のないところで発育する菌)です。肺炎の原因となる細菌を殺す抗菌薬で治療を行います。

予防

(1)飲食の意識付けや誤嚥予防の体位保持(食後すぐに横にならないで、2時間程度座位を保つ)(2)口腔ケア(口の中の雑菌を減らす、嚥下反射を改善させる)(3)咳反射を亢進させる降圧剤であるACE阻害薬による嚥下障害の改善、(4)胃瘻増設、気管食道剥離術(適応は厳格に検討)などがあります。